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Definition: Strength Opus 2

これもまた、強さ。

カテゴリ:なのユー




 「ママとユーノさんって、どっちが強いかなぁ?」

 ふと彼女の口から出てきたそんな問い。



― Definition: Strength Opus 2―



 何を唐突にと返せばちょっと気になってと返事が来た。そういえばもう随分と他人と強さ比べをすることもない。ましてや幼いころから関わり合いを持った人もそれぞれがそれぞれの分野へと進化をしている。そんな中でも自分と彼は系統が全く異なっているのだ。

 「単純には言えないなぁ…」

 強いという形容詞で括っても単純な比較はできない。攻撃力か、魔力か、はたまた総合的な戦闘力か。どう言った基準で強いかが大きく変わってくるのだ。競技格闘ストライクアーツのような一定の基準の下で競ったりすれば明確になるのだけれども、自分たちは選手でないし、その分野の闘い方をする魔道師ではない。総合魔法戦競技なら若干当てはまるかもしれないけれど、今の彼女の問いに答えられるものではないと思う。
 間違いなく攻撃力は私の方が上だ。初めて魔法に出会った時から彼を師にし、レイジングハートを相棒として砲撃魔法を学んできた。それが自分の機動六課の時の立場に表れたのだし、今自分が教導官として後任に教えていることが証明するだろう。違う見方をすると、彼が攻撃魔法を使っているのを全くに近いほど見ていないというのもある。習得はしているのだろうけど。
 対して防御力は間違いなく彼の方が上。昔は魔法の訓練に付き合ってもらって、興味本位もあって彼に砲撃を撃ち込んでみたこともある。その時も彼が本気で組んだシールドを破ることは出来なかったのだ。流石に非殺傷設定とは言え全力全開を撃ち込むのは気が引けるのでやったことはないが、耐えきれるのではないだろうか。フェイトちゃんやヴィヴィオはそれを聞くと眉をひそめるのだと思う。
 細かい魔力運用や並列運用についても彼の技術の方が遥かに上。伊達に無限書庫の司書長の肩書持ちということはある。高速でシールドを何枚も何枚も重ね掛けしたり、検索魔法を同時に幾つも発動させたり、一つ一つの魔法を緻密に制御したりなんて早々できることじゃない。どんな仕事をしているんだろうと思って手伝ってみたものの、あっという間に白旗を上げることになった。同時に張っているシールドも微妙に一つ一つ特性が違っていて、それを利用して攻撃をいなしていくなんて芸当も並の魔道師にはできないことだ。
 彼直伝のバインドは私も良く使っているがオリジナルはクオリティが違う。果たしてナカジマ姉妹やアインハルトちゃんが使う繋がれぬ拳アンチェイン・ナックルとではどちらが勝つのだろうか。


 結局のところ、どちらが強いと問われても勝負の内容次第としか言えないのだ。私が勝てる項目もあれば彼が勝つ項目だってある。魔導師ランクという指標はお互いあるとは言え、これだって様々な要素を数値化して総合的な評価で与えられるものだ。それぞれの個別の要素を見れば判断も変わってくる。お互いも周囲の人間も万能型ではないのだ。
 
 「でもね、ユーノ君が弱いかと言ったらそんなことはないよ」

 前述のとおり彼は後方支援向き。そんな彼が後ろにいてくれる時の心強さはかなりのもの。勿論そう一緒に最前線に出ていくことはないけれども、子供の頃や模擬戦で一緒に組んだ時にはしっかりと私を補助してくれた。私は攻撃に徹して、足りない守備や細かい魔法の運用を彼が行う。はやてちゃんや六課の子たちとも違うそれは慣れ親しんだ感覚だった。フェイトちゃんやシグナムさんと組めば超攻撃型になるし、はやてちゃんやリインちゃんの支援は少し毛色が違う。お互いの性格を知ってるからこそのコンビネーションだから、勝手知ったる所なのだ。もし有事の際に普段の部隊以外からもパートナーを募っていいとなれば真っ先に彼を頼る、そう思えるほど。
 もちろん私だけでなく他の人と組んだ時にだって相手が最大限のパフォーマンスを発揮できるように最適な援護をする。言うなれば支援のプロフェッショナルであり、強み。そんな彼を弱いと評する人はそういまい。彼は彼の分野で「強い」のだ。


 「…それにユーノ君の魔法、何だか温かくて安心するんだ」

 補助魔法や防御魔法で自分を守ってもらった時に感じる、何とも言えない安心感というか温かさが心地よいのだ。言葉にして説明するのは難しいのだけれども、その独特の感覚が私は好き。最近は組む機会も減って少しばかりつまらなかったりする。今度久々に模擬戦に呼んでみようか。

 それを話したところで目の前のヴィヴィオがニヤついたというか、変な顔をしているのに気づく。

 「ヴィヴィオ、どうしたの?」
 「べっつにぃ~」

 ―私、何か変な事を言ったのかな?

by suomynonaTM | 2017-04-30 01:31 | Write